劇評集

俳優の身体性で舞台空間作りだす「縄」
「噂の真相」2000年10月号『小劇場情況』より 
江森盛夫
 
 ストアハウスカンパニー公演「縄」(作・演出/木村真悟)。
 このカンパニーは戯曲の上演という形式にとらわれず、俳優の身体性を軸にした作品を展開している。
 俳優の身体と可動的な舞台装置との絶え間ない『運動』によって舞台空間を作りだす。
 前2作「箱」、「Wanderers」では、木箱が俳優の相手で、今回の作品では大小、長短の縄の群れが俳優と対峙する。
 最初は縄は天井からぶら下がっていて、その縄に間を俳優たちがさまざまな方向に歩き、走り回る。
やがて縄の間から外を見たりしていたが、ついになわをひきずりおろし、バラバラにして、縄を壁に結びつけたり、顔に巻き付けたり、縄で喧嘩したりと、さまざまなパフォーマンスが繰り広げられる。
 この縄と俳優たちの葛藤が極めて劇的なのは、縄の持つプリミティヴな力、呪物性が露呈してくるからで、殺す道具にもなり、 生活の助けにもなる多機能性と汎用性が、それと関わる人間に特定できないリアルを出現させるからだ。
 スピーディでストレートな進行が縄と人間を開示する迫力溢れる舞台だった。