縄について

01/07月

 現在使われている縄は、昨年11月のソウル公演のための稽古の際に購入されたものである。初演(昨年7月)時に使っていた縄は俳優たちに評判が悪く、稽古場の片隅に積まれている。素材は麻なのだが、同じ麻でも値段によってその感触は相当に違うらしい。
 値段の違いはその縒り方にある。と舞台美術担当の袴田長武は言う。
 安い縄は2本で縒ってあるのにたいし、高い縄は3本で縒られている。2本縒りの縄は、どうしても縒りが甘くなるため、埃が出やすく、俳優が呼吸困難になるほどだった。それに比べて3本縒りの縄は、埃は多少出るものの、その絡まりやすさ、ほどきやすさ、しなやかさが絶妙なのだと俳優たちは言う。やはり三つ編みのほうがしっかりとしているということなのだろう。
 また以前はマニラ麻の縄も使用していたのだが、この縄はなぜか油のにおいがきつく、ちくちくと肌に突き刺す痛みがあると俳優たちには評判が悪く、現在は使用されていない。
 制作サイドとしては、経済的な問題もあり、できるだけ安い縄を使って欲しかったのであるが、俳優の健康上の理由と、気分の問題を考えて、泣く泣く新しい縄購入を承諾したのであるが、いまだにあの古い縄はどうするんだと折に触れていやみを言われている。
 懐かしいのはわら縄である。
 なんと言っても匂いがいい。
 初演時にはその縄を使って、舞台下手奥に縄柱が立っていたのであるが、現在は使われていない。
 昨年のソウル公演から使われている韓国で購入した縄のことも忘れてはいけない。せっかく韓国で公演するのだからと東大門市場(トンデンムンシジャン)で見つけた縄が密かに大量の縄の中に一本だけ紛れ込んでいる。
 日本の縄と韓国の縄の違いは、そのきしみ方にあると舞台美術の袴田長武は言うのだが、本当のことは誰にもわからない。
 ロシアでは強行日程のため、縄を探すことはできなかった。今となっては残念である。

当日パンフより

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