箱-Boxes-2008 演出ノート1

08/3月

「箱」は、箱が、動き続ける芝居です。
 そうはいっても、舞台の中に、何らかの仕掛けが施されているわけではありません。
 舞台に登場するいわゆる俳優とか、パフォーマーと呼ばれる人々が、箱を動かし続けます。つまりは人海戦術です。
 舞台の上には、幅90cm、高さ30cm、奥行き30cmの、20個の木製の箱が置かれています。箱の大きさや材質や個数には、ほとんど意味がありません。現在50歳の演出の木村氏によると、箱は、氏の郷里である青森で、子供の頃よく見かけたりんご箱に似せたという話があることはあるのですが、彼らにとってはそんなことはどうでもいい話です。彼らは他人の記憶や歴史にはほとんど興味がありません。
 彼らは、目の前にある、箱を動かします。
 彼らは、箱を運び続けます。
 彼らによって動かされ、運ばれるたびごとに、「箱」は、「壁」や、「道」や、「穴」や、「門」になります。もちろん彼らは、「箱」は「箱」であり、けっして「壁」や、「道」や、「穴」や、「門」でないことは知っています。
 箱を動かし、運び続ける彼らの姿は、いわゆる俳優とかパフォーマーではなく、まるで労働者のようです。

彼らは「箱」を動かします。
 彼らは「箱」を運び続けます。
 そして、「箱」は、動き続けます。

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