Ceremony2012 -おひさまのほうから

2011年12月

動くな
そして
立ち止まるな
ただ耳を澄ませ
冷蔵庫の野菜室のなかで
かさかさに乾いた白菜の葉っぱのなかにいる
お前の耳は何を聞いているのだ
冷凍保存された俺の眼球は
まな板の上の合い挽きのミンチの中で溶け出している
おい、そこの誰か
そうだよ
そこにすわっているおまえだよ
早いとこ畳屋に走って、針と糸を借りてくるんだ
溶け出した風景の中で、ミシンを担いだおふくろが走り回っている

もう間に合わない
たちまちのうちに凍りついた大海原は
あっという間にかき氷にされて
さらさらと粉雪になって降り積もる
そっと舌の上にのっけてみると
なんだか苺の味がする
そうだ、そんなもんだ
毒茸にしびれた俺の舌が
もつれながら何かを叫んでいるらしい
が、おそらくはそれも嘘だ
だからさっきから言っているじゃないか
真実なんかどこにもありはしないんだって
だから
動くな
そして
立ち止まるんじゃない

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