「儀式―Ceremony」

06/10月

 結婚式場では花嫁や花婿が不在のまま、高らかにファンファーレが鳴り響き、
 バージンロードに残された足跡を、考古学者のように覗き込むわれわれがいる。
 斎場は、セレモニーホールと名前を変え、今日もまた死者なき葬式が繰り返される。
 火葬場には骨さえ残っていないのだ。
 夥しい数の化石が、今日もあちこちの工場で生産されている。
 化石は捏造された記憶を背負い、埋められることもなく、
 また闇に身を隠すこともできず、ただ漂うために漂っている。
 だからこそ、墓は掘り起こしてはならない。
 いや、だからこそ墓は掘り起こされなければならない。
 墓を掘り起こす我々がいる。
 墓に埋められる我々がいる。
 それをみている我々がいる。
 繰り返される、我々に視線の往復。
 「我々」は、再び埋葬されなければならない。

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