結婚式場では花嫁や花婿が不在のまま、高らかにファンファーレが鳴り響き、
バージンロードに残された足跡を、考古学者のように覗き込むわれわれがいる。
斎場は、セレモニーホールと名前を変え、今日もまた死者なき葬式が繰り返される。
火葬場には骨さえ残っていないのだ。
夥しい数の化石が、今日もあちこちの工場で生産されている。
化石は捏造された記憶を背負い、埋められることもなく、
また闇に身を隠すこともできず、ただ漂うために漂っている。
だからこそ、墓は掘り起こしてはならない。
いや、だからこそ墓は掘り起こされなければならない。
墓を掘り起こす我々がいる。
墓に埋められる我々がいる。
それをみている我々がいる。
繰り返される、我々に視線の往復。
「我々」は、再び埋葬されなければならない。