Sanctuary 演出ノート1

06/3月

 人が人と話す。
 あるいは、人が人を真似る。
 そのことを記録し、構成するのが作家の仕事である。だとすると、「Sanctuary」における自分の仕事はいったい何なのだろうか。
 「Sanctuary」には、いわゆる人間が登場しない。
 「Sanctuary」に登場するのは、パンティストッキングで梱包された人らしきものである。
人らしき、彼等は、声や言葉を奪われた存在として、あるいは性や性別を奪われた存在として目の前にいる。
 彼らが話す相手は、自分たちの体重であり、自分たちが作り出した、足音であり、自分たちを梱包しているパンティストッキングそのものである。
 おそらく僕の仕事は、そのことを記録し、構成することなのだろうが、記録はともかく構成はできそうもない。
 彼等が、パンティストッキングで、身を包んだとき、あるいは包まれたとき、物語はすでに構成されているのだから。
 物語から抜け出ること、彼等の戦いは、そこにある。
 だとすると、僕の仕事は、ことの結末を見続けることしかない。

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